「未来はどうなってしまうのか?」という問いを耳にすることがあります。
未曽有の高齢化、気候変動、急速なデジタル化、そして人工知能の進化。私たちはいま、
巨大で複雑な変化のただ中にいます。こうした「メガトレンド」は、ときに個人の力では抗え
ないもののように感じられるかもしれません。
しかし、私たちが無力だというわけではありません。人類は孤立して生きてきた存在ではな
く、限られた資源の中で互いにつながり、文化を育み、創意工夫を重ねながら、単なる生存
を超えた豊かな生を追求してきました。
社会的処方は、この「つながり」の力を活用し、医療や福祉、地域活動を通じて誰も取り残
さない社会を目指す実践です。近年、各国で導入が進み、エビデンスも着実に蓄積されて
います。
なかでも、アートや文化、自然との関係性を活かした取り組みは、新たな可能性を示してい
ます。文化的な参加や自然との共生的な経験は、人々のウェルビーイングを支える重要な
資源となり得ます。
本会議は、日本・京都で開催されます。1200年の歴史を持つこの都市は、地震・紛争・洪
水・疫病など、数々の危機を乗り越える中で独自の文化を紡ぎ、継承してきました。自然と
共生し、関係性を重視するアニミズム的世界観は、文化や自然を活用した社会的処方の実
践に独自の視点をもたらしているように思います。
私たちは、文化芸術を通じた社会的処方を「文化的処方」と呼び、その可能性を探求してい
ます。世界各地にも、それぞれの文化や価値観に根ざした多様な社会的処方が育っていま
す。本会議が、そうした多様性を共有し、各地域にふさわしい社会的処方の未来を共に構
想する場となることを願っています。
不確実な時代だからこそ、「未来はどうなってしまうのか?」という問いが、「未来はこう創っ
ていける!」という希望へと変わることを期待しています。
京都で皆様とお会いできることを心より楽しみにしています。
ISPC2026大会長 近藤尚己
京都大学大学院医学研究科社会疫学分野主任教授
京都大学成長戦略本部社会的共通資本研究部門部門長
一般社団法人安寧社会共創イニシアチブ代表理事
